看板の歴史を調べてみると
看板の歴史は実はとても古く「令義解(りょうのぎげ)」(833年)の開市令で、市で品物を売る際に、商人に標を立てることを義務づけたそうです。売っている品物が何なのか誰でも判るようにした、ということですね。考えてみれば当たり前なのですが、消費者に対する表示義務が平安時代初期から根付いたというのは興味深いです。
いまでも、食品等の正しい表示方法がニュースになるくらいですから看板選びは大切です。
鎌倉時代に入ると、簡板と呼ばれる竹や木の札が使われるようになります。この頃から文字で屋号が書かれるようになり、より看板らしくなります。その後、室町時代から桃山時代には文字や絵でデザインされた屋号が前面に押し出された暖簾、看板が登場し、お店の独自のスタイルを売りにするようになりました。謂わばCI(コーポレートアイデンティティー)ですね。安定した貨幣経済による商業の発達と共に、江戸時代にはデザインや商標の意識がさらに高まります。いまでも見られる銭湯や質屋の看板は有名ですが、消費者にいかに訴求し、お客様を引き込むか、そうした工夫を凝らした看板がたくさん作られました。興味深いのは洒落っ気と粋、判じ物と呼ばれるクイズのような看板で惹きつけたことです。もちろん、現在の看板にこうしたデザインをそのままという訳にはいかないですが、楽しさ(Fun)を引き出す魅力で、学ぶ部分はたくさんあります。
明治、大正、昭和、平成と続く現在、洋風なものと混交し、国際化やバリアフリー、省エネといった情報とマテリアルの変化が激しい時代です。日本語に英語、中国語、ハングルの訳文が添えられ、ネオンに変わってLEDの看板が多くみられるようになりました。それでも連綿と続く看板の本質は大切にすべきです。判りやすく、惹きつけ、なにより魅力のある看板。お客様は、たくさんの情報の中から選ぶのですから、看板はその代名詞ともいえるのです。